君と世界を変えて行く/幻想と現実の狭間で生きる・9

ひと休み

私は通勤用にバイクを買った。

もう3年位は経つだろうか。

コロナ禍もあって、満員電車を避ける為だった。

バイクはオフロード用(山道や林道、砂浜など)だ。

なので、春から秋頃にバイクでツーリングをする。

ほとんどが山で林道が多い。

ネットで見た林道に関する記事で、

心に響くものがあった。

林道とは・・・。

著作権の問題もあるので書けない。

やはり、経験から出てくる言葉というものは、

重みというか、心に響いてくるものだ。

ある日(昨年の秋頃)のこと、夜明け前に隣県にあるスーパー林道を目指した。

林道に入ると、まるで谷底を走行しているような感覚だった。

まだビギナーなので、ワクワクする反面、恐る恐るゆっくりと走行した。

基本、ステップに足を乗せて立ち、バランスを取りながら、ハンドル操作して走行する。

林道の途中で、脇道へ入った。

土石流の後のようで、地面は乾いていたので、ちょっと躊躇ったが勢いで登り始めた。

山の中腹辺りに下り坂があって、これくらいなら引き返すことが出来るだろうと、躊躇わずに下ったのが間違いだった。

地面は少しぬかるんでいた。

後輪がスリップして上がれない。

一進一退の繰り返しで、どうにもならない。

これは困った。

この山奥では、携帯も電波が届かない。

幸いに、辺りには大小の石が転がっていた。

やるしかない!

土木作業が始まった。

大小の石を拾っては、積み上げていく。

2時間くらい経っただろうか、少し休もうと腰を下ろした。

驚いた!

すぐ側に、スズメバチが一匹いるではないか。

直感的に、このスズメバチは偵察にきたのだろうと思った。

仲間を呼ぶのかどうか?

この静かな山奥に、バイクのエンジン音が響き渡っていた。

私は何故か、スズメバチに心の中で話しかけていた。

ハチ君、うるさくしてごめんね。

もう少ししたら、この場を離れるよ。

いつの間にかスズメバチはいなくなっていた。

作業再開して、やっと抜け出せた。

この場を抜け出るのに5時間位かかっただろうか。

山を甘く見てはいけないと、その時、初めてそう思った。

つづく。