ひと休み
私は通勤用にバイクを買った。
もう3年位は経つだろうか。
コロナ禍もあって、満員電車を避ける為だった。
バイクはオフロード用(山道や林道、砂浜など)だ。
なので、春から秋頃にバイクでツーリングをする。
ほとんどが山で林道が多い。
ネットで見た林道に関する記事で、
心に響くものがあった。
林道とは・・・。
著作権の問題もあるので書けない。
やはり、経験から出てくる言葉というものは、
重みというか、心に響いてくるものだ。
ある日(昨年の秋頃)のこと、夜明け前に隣県にあるスーパー林道を目指した。
林道に入ると、まるで谷底を走行しているような感覚だった。
まだビギナーなので、ワクワクする反面、恐る恐るゆっくりと走行した。
基本、ステップに足を乗せて立ち、バランスを取りながら、ハンドル操作して走行する。
林道の途中で、脇道へ入った。
土石流の後のようで、地面は乾いていたので、ちょっと躊躇ったが勢いで登り始めた。
山の中腹辺りに下り坂があって、これくらいなら引き返すことが出来るだろうと、躊躇わずに下ったのが間違いだった。
地面は少しぬかるんでいた。
後輪がスリップして上がれない。
一進一退の繰り返しで、どうにもならない。
これは困った。
この山奥では、携帯も電波が届かない。
幸いに、辺りには大小の石が転がっていた。
やるしかない!
土木作業が始まった。
大小の石を拾っては、積み上げていく。
2時間くらい経っただろうか、少し休もうと腰を下ろした。
驚いた!
すぐ側に、スズメバチが一匹いるではないか。
直感的に、このスズメバチは偵察にきたのだろうと思った。
仲間を呼ぶのかどうか?
この静かな山奥に、バイクのエンジン音が響き渡っていた。
私は何故か、スズメバチに心の中で話しかけていた。
ハチ君、うるさくしてごめんね。
もう少ししたら、この場を離れるよ。
いつの間にかスズメバチはいなくなっていた。
作業再開して、やっと抜け出せた。
この場を抜け出るのに5時間位かかっただろうか。
山を甘く見てはいけないと、その時、初めてそう思った。
つづく。